コラム

社員がうつ病になる前に!予防につながるメンタルヘルスケア

よく言われるのは「メンタルヘルス対策ってやらなきゃダメなの?」というものです。
とくに中小事業主さんは「うちは規模が小さいから」と思われがちです。

しかし、事業主は従業員の健康を確保し職場の安全に配慮する「安全配慮義務」という法的な義務を負っています。

現在は精神疾患にもいろいろと種類があり、うつ病だけでなく、発達障害、パーソナリティー障害などの社員をどのように活用していくかということも課題となっています。

メンタルヘルスケアは、他の労務管理と違い、精神疾患者が出てから対策をしたのでは意味がありません。

社員を守り、会社を守るためにも、リスクマネジメントとして備えておきましょう。

労働者の現状

日本の自殺者数は2019年は約2万人。
過去最低まで減っているとはいえ、世界的に見ればまだまだ多いのが現状です。

一方で、精神疾患の患者数は急激に増加しています。
うつ病だけでも厚生労働省は100万人、WHOは500万人を超えていると発表しています。

これらのデータに高い割合で含まれるのが「勤務問題が原因とされる労働者」です。

実際に精神障害等にかかる労災請求も増え続けています。


厚生労働省【こころの耳】https://kokoro.mhlw.go.jp/より

国が最も力を入れている施策の1つ

「強い不安やストレスを感じながら働いている労働者の割合が6割前後を占めているという事実がもう20年近く続いている」
「精神障害による労災申請の請求・認定件数が高水準で推移している」
この二点が問題視され、厚生労働省は2000年8月に労働者の心の健康を保持することを目標にした「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」を発表しました。

2015年12月には、労働安全衛生法の改正により、50名以上の事業所はストレスチェックが義務化されました。

国は職場が自主的にメンタルヘルスに取り組むことを推奨しています。

企業の対策は遅れています

メンタルヘルスケアに「取組んでいる」事業所割合は50.4%、「取組んでいない」が45.6%とほぼ拮抗しており、企業規模が大きいほど「取組んでいる」事業所の割合が高くなっています。

しかし、過去1年間にメンタルヘルス不調で1ヵ月以上休職又は退職した労働者がいた事業所でも、メンタルヘルスケアに「取組んでいない」事業所が32.2%と少なくありません。

「取組んでいない」理由については、取組み方が分らないが52.1%。
増加するメンタルヘルス不調者を抱えながら、有効な対策が打てずにいる現状があるようです。

メンタルヘルスケアを行うメリット

メンタルヘルスケアをきちんと行っている企業では「イメージアップ」と「社員の質の向上」という相乗効果が得られます。

企業イメージアップ

メンタル不調者を出さないように未然に防ぐ努力をしている、もしくは、メンタル不調者が現れたら迅速に、丁寧に、適切な対応をしている。その姿勢は社内のみならず、社外での信頼・信用にも繋がります。

優秀な人材の確保

イメージの良い企業には優秀な人材が集まります。安心して働ける職場であるために離職率が低くなり、結果的に優秀な人材の確保ができるようになります。

生産性の向上

職場への信頼が増せば仕事のモチベーションは上がります。社員のストレスが軽減されるほど生産性は向上します。

企業に求められる対策

ストレス状態が続くと心身の病気や知的能力の低下につながるだけでなく、労災事故や交通事故を起こす可能性も高まります。
また、ストレスを抱えた従業員は、遅刻や欠勤などを繰り返すようになり、ほかの従業員の負担も大きくなって、職場の雰囲気も悪くなってきます。
このような職場にならないためにも、メンタルヘルスケアは重要となっています。

社内ルールの明確化

企業の人事労務管理において就業規則の整備は必要不可欠ですが、メンタルヘルス対策のためには「休業規定」をしっかり定めておくことが重要です。
企業として社員にどこまで支援できるか、逆に言うとこれ以上は支援できないという線引きです。
休職する本人にとっても、休職期間中の処遇や休職期間の延長などについて明確にされていた方が、安心して休養に専念することができます。

また、昨今では「新型うつ」と呼ばれる長期療養や休職と復職を繰り返すケースが増えています。
従来の「うつ病」しか想定していない就業規則では対応しきれない場合もあります。
この点からも、就業規則の見直しをお勧めしています。

社員への教育・研修

心の病を未然に防ぐには、社員一人ひとりがメンタルヘルスに関する正しい知識を持ち、自分自身のストレスに適切に対処できるようになることが大切です。
会社側としては労働者に対して繰り返し教育・情報提供を行うことにより、ストレスへの気づき、ストレスの予防や対処の方法などについて知識をもつように啓蒙し、メンタルヘルスに対する意識を高めていくことが重要となります。

担当者のケアも忘れずに

メンタルヘルス対策を担当する総務や人事の人たちは、メンタルヘルスに限らず日々社内のトラブルに対処しています。
「他人の負の感情にさらされる」というのは、それだけで大変なストレスです。そのことを会社がきちんと評価しましょう。
担当者は親身になりすぎないよう、仕事としてやるべきことをやったら終了としてください。
産業医やカウンセラーを相談相手として置くなど、第三者がピリオドを打つ仕組みも有効です。

社労士によるサポート

当事務所では、カウンセリング、就業規則・休職規程の見直し、社内研修、休職復職に関する書類作成などを行っております。

以下の項目に当てはまるようなら、ご相談ください。

◆メンタルヘルス対策に取り組みたいが、何をしていいかわからない。
◆労働基準監督署の調査でメンタルヘルス対策に関して「指導票」の交付を受けた。
◆社員が突然診断書を持ってきた。
◆メンタルヘルス不調者に対応できる就業規則・休職規定を整備したい。
◆臨床心理士、産業カウンセラーのカウンセリングを実施したい。
◆ラインケア研修、セルフケア研修を実施したい。
◆メンタル不調が心配な従業員に病院で受診するよう勧めたが拒否された。
◆休職していた従業員が復職したいと申し出てきたが、判定に迷う。
◆休職と復職を繰り返す「新型うつ」の従業員に困っている。
◆職場復帰支援プログラムを作成したい。
◆ストレスチェックを実施したい。
◆従業員・家族向けの相談窓口を設けたい。

「こころの病になった社員」に対し、腫れ物に触るような対応になりがちですが、その社員も企業にとって大切な人財。
その社員が退職したとしても、原因となる問題を解決しない限り、また別の社員を同じように失いかねません。

また、最近はブラック企業認定制度があり、精神疾患による労災が重なると名簿に載り、さらに悪質な場合は公表されてしまいます。
ブラック企業として社名が公表されてしまったら、人が辞めていく、採用ができない、取引停止、補助金・助成金をもらえないなど、影響は計り知れません。

メンタルヘルス対策の本当の目的は、「リスク回避」と「生産性の向上」と考え、ともに取り組んでいきましょう。

厚生労働省では、働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」を開設しています。
メンタルヘルスケアに関心のある経営者様は、こちらもご活用ください。

厚生労働省【こころの耳】https://kokoro.mhlw.go.jp/

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